広大な自然に囲まれたゴルフ場はリラックスできる場所ですが、雷の発生時には一転して非常に危険な場所となります。
特に山岳コースや河川敷コースでは、周囲に高い建物がなく、落雷のリスクが高まります。
実際、過去には多数の死亡・負傷事故が発生していて、雷鳴が聞こえた瞬間の判断と行動が命を左右します。
この記事では、ゴルフ場で雷が鳴ったときに取るべき具体的な避難行動を7つのポイントに整理して紹介するとともに、実際に日本国内で起きた落雷事故の一覧を掲載しています。
雷の正しい知識と行動指針を身につけることで、自分自身だけでなく同伴者の命を守る手助けとなるでしょう。
雷が鳴ったら実行すべき7つの避難行動
・すぐにプレーを中断
雷鳴が聞こえたら、サイレンの有無にかかわらず即中断。
ゴルフ場の指示を待つまでもなく、自己判断で避難を開始して構いません。
・避難場所を確認
避雷小屋、クラブハウス、近くの茶店など、あらかじめ避難可能な場所を把握しておきましょう。
・ゴルフクラブを置く
金属製のクラブは雷の通電経路になる危険があります。
移動時は必ず地面に置いてから避難します。
・木の下に入らない
雷は高い木に落ちやすく、木の下にいると感電します。
最低でも4メートル以上は離れましょう。
・カートでの避難は避ける
ドアのないカートは人体が露出しているため、感電のリスクがあります。
徒歩で冷静に移動してください。
・開けた場所では姿勢を低く
避難先がない場合、両足をそろえてしゃがみ、頭を低くして耳をふさぎます。
両カカトをつけることで、体内への電流侵入を防げます。
・雷雲の兆候を見逃さない
黒く厚い雲やカリフラワーのような形の雲は積乱雲の可能性があります。
空模様の変化に注意を払い、早めに避難の判断をしましょう。
ゴルフ場での雷事故は意外に多い
以下は、実際に日本全国のゴルフ場で発生した落雷事故の一部です。
特定の地域や季節に偏らず、落雷は誰にでも起こる得る”危険”であることが分かります。
年月日 | 発生場所 | 状況 | 被害 |
---|---|---|---|
1963/8/25 | 埼玉県戸田市 | 河川敷ゴルフ場 | 1人死亡 |
1973/7/8 | 千葉県佐倉市 | プレー中 | 1人死亡 |
1973/8/3 | 栃木県日光市 | プレー中 | ゴルファー3人・キャディ1人死亡 |
1973/8/6 | 京都府丹波町 | プレー中 | 1人死亡 |
1973/8/6 | 大阪府枚方市 | プレー中 | 1人死亡 |
1974/8/2 | 大阪府池田市 | プレー中 | 1人死亡 |
1974/8/2 | 大阪府茨木市 | プレー中 | 2人死亡 |
1975/8/6 | 三重県上野市 | プレー中 | 2人死亡 |
1976/5/10 | 福島県東村 | グリーン上 | 1人負傷 |
1978/7/7 | 長野県望月町 | 木の下で雨宿り | 1人死亡 |
1979/5/27 | 宮城県愛子町 | 木の下で雨宿り | 1人死亡 |
1979/6/3 | 新潟県笹神村 | プレー中 | 死亡事故 |
1979/7/27 | 千葉県市原市 | プレー中 | 死亡事故 |
1980/7/23 | 香川県牟礼町 | 木の下で雨宿り | 1人死亡・1人重体 |
1985/7/21 | 長野県伊那市 | フェアウェー歩行中 | 1人死亡 |
1991/7/27 | 宮崎県北方町 | 18番ホール | 1人死亡 |
1995/8/20 | 山口県山陽町 | 木の下で雨宿り | 1人死亡 |
1997/9/8 | 茨城県桜川村 | 松の木の下 | 3人死亡・2人負傷 |
2001/8/4 | 岡山県井原市 | グリーンでクラブ所持 | 1人死亡 |
2004/7/10 | 佐賀県北茂安町 | 傘を差して移動中 | 1人死亡 |
2010/7/4 | 北海道奈井江町 | プレー中 | 3人負傷 |
栃木県のゴルフ場で経験した落雷の恐ろしさ
平成の初めころ、初夏のことでした。
栃木県にある、東北縦貫道佐野インターから15分ほどのゴルフ場。
その日は朝からどんより曇っていて、いつ雨が落ちてきても不思議のない空模様でした。
だが、何とか持ちこたえて午前中のハーフが終わり、残りのハーフも終盤に差し掛かっていました。
「あと2ホールか。このまま、雨に当たらずに終われるかな」
そう思いながらパー3のグリーンでパットを終えた、その瞬間でした。
突然、ゴルフ場の真上で激しい爆音とともに稲妻が走ります。
まさに、耳をつんざくような激しい音量。
空中の火花も恐ろしい。
黒い雲間から黄色と赤が混じった稲妻が、ギューンと地上に伸びては消えます。
まるで、怪獣の不気味な舌のようです。
グリーン上には、まだホールアウトしていない人も。
キャディさんが、持っていたピンをカップに戻し「避難してください」と、青ざめた顔で叫びます。
「バスが巡回していますので、到着までゴルフクラブを持たずに非難してください」
間髪入れずに、そんな放送も聞こえてきました。
全員がグリーンを離れて、道路へ移動を始めた時です。
ティーグランドの方向で何か異様な音がします。
振り向くと、パー3のフェアウェイを青い光が上下にくねりながら、グリーンへ向かって走って来るではありませんか。
先端部分の光は斜め上に向かって細く尖がり、全体を牽引しているがごとくに見えました。
龍が地を這うとこんな感じなのでしょうか。
実に澄んだ青色です。
晴れ渡った五月の空のようにきれいな青でした。
学生時代に見た、霧が晴れた摩周湖の水面がこんな色でした。
真夏の午後の洞爺湖も、このように澄んだ青でした。
うねりも実に規則正しく、地を這います。
青く規則正しい光は、グリーンへ到達。
ピンが少し揺れて、パーンとはじけるような音が響き渡ります。
稲妻が地を這って、ピンに落雷したのです。
四人の仲間とキャディさんは、凍り付いたようにピンをみつめました。
誰一人、口を開きません。
凍り付いた耳にクラクションの音が聞こえます。
四人は一斉に車へ駆け込みました。
キャディさんは、プロです。
手押しの電動カートを懸命に車へ運ぼうとします。
運転手が叫びます。
「カートは後で取りに来るから、早く車に乗って」
青い稲妻が地を這ってピンで爆発するまで、ほんの数秒でした。
恐ろしさの中で見たあのきれいな青色。
恐怖の中に不思議が入り混じった体験。
いつまでたっても忘れられません。
ゴルフ場の素早い判断と行動、そしてキャディさんのけなげなプロ意識も、つい昨日のように思い出されます。
まとめ
ゴルフ場は自然に囲まれた魅力的な場所ですが、雷の危険が常に伴います。
実際に上記のような事故が起きていることからも分かる通り、雷を「たまに起きる自然現象」と侮るのは非常に危険です。
雷鳴が聞こえたら即座にプレーを中断し、避雷小屋やクラブハウスなどの安全な場所へ避難する判断力が命を守ります。
木の下やカート、クラブを持っての移動は絶対に避けましょう。
安全なゴルフは、正しい知識と素早い行動から始まります。