LIVゴルフ(LIV Golf)は、2021年に設立され、翌2022年から本格始動した男子プロゴルフリーグです。
サウジアラビアの政府系ファンド「Public Investment Fund(PIF)」によって巨額の資金援助を受けて、グレッグ・ノーマンを初代CEOに迎えたことで注目を集めました。
LIVゴルフの特徴(詳細解説)
1. 大会形式:54ホール・ショットガンスタート・ノーカット
通常のPGAツアーでは「4日間・72ホール」で競われますが、LIVゴルフは「3日間・54ホール」で行われます。
また、スタート方法が大きく異なります。
ショットガンスタート
全選手が一斉に異なるホールからスタートする形式です。
これにより、プレー時間をコンパクトにまとめ、観客や配信向けにリズムよく展開されます。
ノーカット方式
PGAツアーでは2日目終了時点で成績下位は予選落ちになりますが、LIVでは最終日まで全選手がプレーできます。
2. 巨額契約金と賞金総額
LIVゴルフは、選手に対して破格の契約金を提示して話題になりました。
具体例:
- フィル・ミケルソン:約2億ドル(約300億円)
- ダスティン・ジョンソン:約1億5000万ドル
各大会の賞金総額も非常に高額です。
- 1大会あたり 2500万ドル(約40億円)
- 個人優勝者には 400万ドル(約6億円)
3. 個人戦+チーム戦
LIVは「個人戦」と「チーム戦」を併催しています。
個人戦
通常通りスコアを競い、個人優勝を決定。
チーム戦
4人1組のチームが13組編成され、年間を通じて「チーム総合王者」を決める仕組みです。
代表的なチーム名には「4Aces」「Torque」「Ripper GC」などがあります。
4. 革新的なファン目線の運営
LIVは伝統的なゴルフツアーとは異なり、若年層やライト層をターゲットにしています。
- 音楽フェスや飲食ブース併設のエンタメ型大会
- コース内で音楽を流すなど、静寂を重視しない運営
- 視聴者が好きな選手のショットを自由に選べる視聴システム
5. PGAツアーとの対立と統合
LIV設立当初、PGAツアーはLIV選手を出場停止とし、両者は激しく対立。
しかし2023年には将来的な統合が発表され、今後はLIV選手がメジャー大会などへ復帰する動きが進んでいます。
6. スポーツウォッシング問題
サウジアラビア政府系ファンド(PIF)資金が背景にあるため、「人権問題などから目を逸らさせるためのスポーツ利用(スポーツウォッシング)」という批判が欧米メディアを中心に根強く存在しています。
グレッグノーマンがLIVゴルフのCEOを解任された背景や新CEOについて、詳しくはこちらの記事をお読みください。
要約まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
設立 | 2021年(ツアー開始2022年) |
資金源 | サウジPIF |
大会形式 | 54ホール、ノーカット、ショットガン |
選手構成 | 世界的トップ選手を積極的にリクルート |
評価/批判 | 高額賞金と革新性で注目されつつ、スポーツ洗浄批判や世界ランキング問題もあり |
未来展望 | OWGR参入交渉中、グローバル大会展開、視聴者体験の強化 |
LIVゴルフ 主な参加選手一覧(2025年シーズン)
選手名(カタカナ表記) | 国籍 | チーム | キャプテン | 主な実績 |
---|---|---|---|---|
ジョン・ラーム | スペイン | Legion XIII | 〇 | メジャー2勝、元世界ランク1位 |
ブライソン・デシャンボー | アメリカ | Crushers GC | 〇 | 全米オープン優勝2回 |
ダスティン・ジョンソン | アメリカ | 4Aces GC | 〇 | メジャー2勝、元世界ランク1位 |
ブルックス・ケプカ | アメリカ | Smash GC | 〇 | メジャー5勝、元世界ランク1位 |
フィル・ミケルソン | アメリカ | HyFlyers GC | 〇 | メジャー6勝 |
セルヒオ・ガルシア | スペイン | Fireballs GC | 〇 | メジャー1勝、ライダーカップ活躍 |
パトリック・リード | アメリカ | 4Aces GC | × | マスターズ優勝 |
ティレル・ハットン | イングランド | Legion XIII | × | メジャーTOP5経験 |
ホアキン・ニーマン | チリ | Torque GC | 〇 | LIVシーズンランキング上位 |
リチャード・ブランド | イングランド | Cleeks GC | × | シニアオープン優勝 |
ディーン・バーメスター | 南アフリカ | Stinger GC | × | メジャー上位入賞 |
ジェイソン・コクラック | アメリカ | Smash GC | × | PGAツアー優勝複数回 |
テイラー・グーチ | アメリカ | Smash GC | × | LIV年間王者、複数大会優勝 |
マーティン・カイマー | ドイツ | Cleeks GC | 〇 | メジャー2勝、元世界ランク1位 |
マシュー・ウルフ | アメリカ | Smash GC | × | PGAツアー優勝 |
ルーカス・ハーバート | オーストラリア | Ripper GC | × | 欧米ツアー優勝経験 |
香妻 陣一朗 | 日本 | Iron Heads GC | × | 全米オープン出場、日本人唯一の参加選手 |
*キャプテンとは4人一組で行うチーム戦のキャプテンを指します。
まとめ
LIVゴルフは、従来のゴルフ界が長年維持してきた価値観や仕組みを根底から覆す存在として登場しました。
ショットガンスタートやノーカット方式といった革新的な大会形式、巨額の賞金や契約金によって世界中のトッププレーヤーを引き抜く姿勢は、これまでのツアーとは一線を画しています。
また、音楽やエンタメ要素を融合した大会運営など、新しいゴルフファンの開拓を狙った戦略も特徴的です。
一方で、LIVゴルフの成長は単純にスポーツの枠内だけで語れるものではありません。
サウジアラビア政府系ファンド(PIF)の莫大な資金を背景にしているため、倫理的・政治的な議論が常に付きまとい、「スポーツウォッシング」の批判を受けています。
また、設立当初からPGAツアーやDPワールドツアーと激しく対立したことで、ゴルフ界全体を二分する事態にも発展しました。
2023年には和解や統合に向けた動きが表面化し、今後は世界ランキングへの復帰やメジャー大会との接続が進むと見られています。
しかし、伝統と革新、ビジネスと倫理、スポーツと政治という複雑な対立軸を抱えたまま、その未来はなお不透明です。