LIVゴルフは、サウジアラビア政府系ファンド「PIF」の莫大な資金を背景に、2021年に設立されました。
その初代CEOにはグレッグ・ノーマンが就任し、ゴルフ界に衝撃を与えました。
しかし2025年現在、すでにノーマンは解任され、アメリカ人実業家スコット・オニールが後任となっています。
本記事では、その背景と理由、今後のLIVゴルフのビジョンを詳しく解説します。
グレッグ・ノーマンが初代CEOになった背景
グレッグ・ノーマンは、1990年代から既存のPGAツアーとは異なる「世界中のトップ選手だけを集めた少数精鋭のリーグ構想」を抱いていました。
1994年には実際に「ワールドゴルフツアー」の構想を公表し、マーク・マコーマック率いるIMGやフォックステレビとともに、高額賞金・少数招待制の新リーグ設立を目指していました。
しかし、当時のPGAツアーはこれを強く警戒し、主要スポンサーや大会運営者、選手に圧力をかける形で事実上潰したとされています。
この経緯から、ノーマンは長年「PGAツアーの閉鎖的で独占的な姿勢」に不満と反骨心を持ち続けていました。
彼は後年に至るまで、公の場で「PGAツアーはプレーヤーの利益を軽視している」と批判し続けています。
そのため、LIVゴルフを立ち上げようとしたサウジPIFにとって、ノーマンはまさに「PGAツアーへの対抗心を体現する象徴的存在」と映りました。
彼自身が長年温めていた構想を、今度はサウジの潤沢な資金によって実現できるタイミングでもありました。
また、ノーマンは元世界ランク1位としてゴルフ界での知名度が高く、スポーツビジネスや不動産など複数の分野で成功を収めた実業家としても知られています。
こうした背景から、LIVゴルフのスタートアップにおいて「PGAと対立し得る看板」として、また「世界中のゴルファーやスポンサーに説得力を持つ顔」として、彼が選ばれたのは極めて自然な流れと言えるでしょう。
サウジ側の狙い
- スポーツを通じた国家ブランド向上(スポーツウォッシング)
- 経済多角化戦略(Vision 2030)
- PGAツアーへの対抗・既存ゴルフ界の破壊
ノーマン就任の必然
- 過去の対抗ツアー構想と反PGA的思想
- ゴルフ界での知名度と影響力
- 選手・スポンサー獲得に強い顔役
LIVゴルフについて詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
ノーマン解任の理由
2023年、LIVゴルフとPGAツアーが和解交渉に入ったことで、ノーマンは「反PGA」という役割を終えました。
解任の主な理由
- 交渉能力不足(PGAとの融和に不向き)
- 欧米メディアからの批判集中
- スポンサーやビジネス界からの敬遠
- 運営能力より対立煽動が先行した
現在のCEO|スコット・オニールについて
スコット・オニールは、NBA・NFL・NHLといったアメリカの主要スポーツリーグで20年以上にわたり経営の最前線に立ってきた実績を持つ実業家です。
フィラデルフィア・76ers(NBA)、ニュージャージー・デビルズ(NHL)、フィラデルフィア・イーグルス(NFL)などでスポーツビジネスの実務に携わり、マディソン・スクエア・ガーデン・スポーツ(ニューヨーク・ニックス、レンジャーズなどの親会社)では要職を歴任。
特にスポーツビジネスにおける「ブランド力の強化」「ファン層の拡大」「エンターテインメントとスポーツの融合」において高い評価を受けてきました。
近年はロンドン・アイなどを運営する世界的エンターテインメント企業「Merlin Entertainments」のCEOも務め、スポーツだけでなくテーマパークや観光施設など広範な分野でもマネジメント経験を重ねています。
このように、スポーツビジネスだけでなく、エンターテインメント全般での経営手腕を有している点が大きな特徴です。
2025年1月、LIVゴルフはグレッグ・ノーマンからバトンを引き継ぐ形でオニールを新CEOに迎えました。
これは、LIVが創設期の「対PGA戦略」から、次のステージである「世界展開」「グローバルスポンサー獲得」「新規ファン層拡大」「メディアビジネス構築」へと戦略をシフトしたことを意味します。
オニールには、これまでのスポーツ興行とエンターテインメント業界で培った実績を活かし、LIVゴルフを世界的なスポーツビジネスブランドへと成長させる役割が求められています。
オニールCEOの経歴
- フィラデルフィア・76ers、マディソン・スクエア・ガーデンなどを歴任
- ハーバードMBA
- Merlin Entertainments(ロンドン・アイなど運営企業)前CEO
オニールが描くLIVの未来
- F1型スポーツエンタメモデルへの進化
- 世界放送権の拡大(DAZN等)
- 若年層・新規層へのリーチ
- メジャー大会・OWGR参入交渉の本格化
まとめ
LIVゴルフは、グレッグ・ノーマンの強硬路線で既存ゴルフ界に一石を投じましたが、その役目は終わり、今はスコット・オニールが「スポーツエンタメ事業」としての次フェーズを担っています。
今後の成長には、ビジネスモデルの確立と視聴者層の拡大、そしてメジャー大会への道筋が重要となるでしょう。