キャディの仕事はゴルファーと最も近い場所にいて、プレーヤーとゴルフ場を支える重要な存在です。
しかし、その裏には想像以上の苦労や、思わず笑ってしまうような「あるある」もたくさん潜んでいます。
この記事では、実際にキャディを経験した方の声や、掲示板・SNSで語られたリアルなエピソードをもとに、よくある質問と本音の答えをQ&A形式で紹介します。
Q1. キャディって大変ですか?|超の付く名門コースで聞いてみた
はい、大変な仕事です。
見た目以上に体力と気配りの両方が求められます。
現在の多くのゴルフ場では、バッグはカートに積んで移動します。
キャディが担ぐスタイルはプロのトーナメントや一部の特別なケースに限られ、一般的なプレーではほとんど見られません。
ただし、カートがあるからといって決して楽な仕事ではありません。
私が勤めているコースは名門と呼ばれているので、キャディは18ホールをほぼ徒歩で移動します。
そして、クラブの受け渡し、ボール位置の確認、芝の状況の説明、ライン読みの補助などを的確にこなしていきます。
加えて、プレーの進行をサポートし、全体のラウンドがスムーズに進むよう目配り・気配りを欠かしません。
特に夏は炎天下の中で何時間も動き続け、冬は冷たい風にさらされながら業務を行うため、気象条件への適応力も不可欠です。
雨の日でも業務は通常どおり行われ、レインウェアを着て、ずぶ濡れのままホールを回ることもあります。
このような日々を重ねるなかで、自然と足腰の筋力がつき、持久力も養われていきます。
ただし、慣れるまでは多くの人が「想像以上にきつい」と感じる仕事です。
それでも、プレーヤーとの信頼関係が築けたときや、感謝の言葉をもらえたときには、言葉では言い表せない充実感があります。
自分でこう言っては何ですが、キャディはまさにゴルフというスポーツを陰で支える、縁の下の力持ちなのです。
Q2. 一番困るお客さんってどんな人?|大衆的なコースで聞いてみた
正直に言えば、「自分のミスを認めず、キャディのせいにする人」が一番困ります。
たとえば、こんな場面があります。
セカンド地点で残りの距離を聞かれる。
私が「残り150ヤードです」とお伝えします。
するとお客様は、迷わず7番アイアンを手に取り、セカンドショットを打ちます。
ところが、ボールは手前で失速し、グリーンに届かない。
ミスショットは明らかで、トップや打点のズレが原因なのですが、その方はこう言うのです——「なんだ、150ヤード以上あるじゃないか」。
こちらとしては正確な距離を測ってお伝えしていても、ご自分の感覚や理想の飛距離とズレた結果が出ると、そのまま不満がこちらに向けてしまう。
とても悲しい気持ちになりますし、何より次第に信頼関係が築けなくなってしまいます。
また、「クラブを毎回置きっぱなしで戻さない方」や、「何でも“そっちで考えて”と丸投げしてくる方」、「アドバイスを一切受け入れない方」も困るタイプに入ります。
キャディはプレーヤーの良き補佐役でありたいと考えて行動していますが、その前提として、最低限の協力姿勢がなければ、どうしても仕事の質が落ちてしまいます。
もちろん、そうした方ばかりではありません。
むしろ多くのプレーヤーは礼儀正しく、感謝の気持ちを伝えてくださる素敵な方々です。
ただ、いわゆる“自分本位”なプレーをされる方が組にひとりでもいると、ラウンド全体の雰囲気がぎこちなくなることがあるのも事実です。
キャディとしては、どんな方にも平等に、丁寧に接するよう心がけています。ただし、信頼と協力があってこそ、双方にとって気持ちの良いラウンドが生まれる——それもまた真実です。
Q3. 逆に、うれしいお客さんって?|大衆的なコースで聞いてみた
キャディにとって一番うれしいのは、キャディをただの作業係ではなく、「パートナー」として尊重してくださる方です。
ゴルフはあくまでプレーヤー主体のスポーツですが、キャディの立場や役割を理解し、信頼していただけると、こちらも全力でお手伝いしたくなります。
1. メンバーのお客様で「うれしいタイプ」
常連のメンバー様でも、やはり対応には差があります。
こちらが特にありがたいと感じるのは、言葉遣いが丁寧で、ラウンド中に会話のテンポや距離感をうまく取ってくださる方です。
「今日もよろしくね」「ありがとう、助かったよ」といった一言があるだけで、仕事に対するモチベーションは大きく変わります。
キャディを信頼して相談してくださる姿勢にも誠意を感じます。
逆に困るのは、キャディを下に見るような態度を取る方です。
クラブを乱雑に扱ったり、命令口調で接してきたりする場合は、こちらも対応に苦慮します。
名門コースではそうした態度は厳しく見られ、「人としてどうか」と言われるようですが、大衆的なコースではたまに見かけるのが実情です。
2. ビジターのお客様で「うれしいタイプ」
初めてのコースで不安もある中、キャディの案内やアドバイスにしっかり耳を傾けてくださる方は、まさに理想的なビジターです。
「初めてだから、いろいろ教えてね」と声をかけていただければ、こちらも自然と丁寧にご案内したくなります。
一方で困るのは、経験値を振りかざし、最初からキャディを信用しない態度を取る方です。
こちらが残り距離を伝えたにもかかわらず、「いや、自分はこっちで行く」と完全に無視。
結果的にミスショットになっても、「距離が違うじゃないか」と八つ当たり気味に言われることもあります。
もちろん、最終的な判断はプレーヤーの自由ですし、こちらも押しつけるつもりはありません。
ただ、最低限の信頼関係はとても大事ですね。
ビジター・メンバーを問わず、「プレーをともに楽しもうとする姿勢」や「相手を思いやる気持ち」を持っている方こそ、本当に素晴らしいゴルファーだと感じます。
そうした方とのラウンドは、私たちキャディにとっても、長く印象に残ります。
Q4. 本当にあった珍事件は?
キャディとして日々コースを歩いていると、「こんなことも起こるのか」と思わず笑ってしまうような出来事にも遭遇します。
ここでは、実際に体験したちょっとした“珍事件”をいくつかご紹介します。
● スタート直前に靴が片方見当たらない!?
朝の1番ホール、スタートの時間になってもひとりのお客様がティーグランドにきません。
フロントから連絡が入り、どうやら「ゴルフシューズの片方がバッグに入っていなかった」とのこと。
急きょ売店で新しいシューズを購入され、数分遅れでスタートしましたが、開口一番「これ、高かったんだから今日絶対80台出すぞ!」と宣言。
その気合いとは裏腹に、前半のスコアは50台……という、なんとも切ない幕開けでした。
● お昼休憩でビールを飲みすぎて…
昼食時にジョッキで何杯もビールを飲んだお客様が、後半のホールでフェアウェイ中央に停まったカートで大いびき。
お連れ様たちは最初こそ笑っていましたが、結局その組は2ホール目でプレーを中断し、フロントへ連絡することに。
倒れられたり、怪我でもされては大変とゴルフは中止に。
信じられない方も多いと思われる、嘘のようなホントウのお話でした。
● 打ったボールが野生のシカに直撃
北海道の山間コースでのこと。
お客様が放ったティーショットが、大きくスライスして右の茂みから現れたシカの背中を直撃。
シカは驚いて森の中へダッシュ、ボールは大きく跳ね返ってラフへ。
動物に当たった場合は、もちろん無罰ですが、その瞬間は一同、呆然と立ち尽くすしかありませんでした。
やや間をおいて、今度は爆笑。
どれも日常とは違う、ゴルフ場ならではの出来事。
珍事件もまた、記憶に残るラウンドの一部です。
Q5. お昼休憩はどんな感じ?中堅的なコースで聞きました
コースにもよりますが、前半9ホールが終わると30分から45分程度の「昼食休憩」が設けられている場合が多く、キャディにとっても貴重なひとときです。
控室では、こんな会話が飛び交うことが多いのです。
「今日は誰についてるの?」
「あ、Aさん?それはいいね。あの人はいいわね。やさしくて。男前だし」
「こっちはBさんとその会社関係のビジター。なんだか、言葉も態度もぞんざいで。分かっていてもむかつく」
こんなふうに、ちょっとした愚痴や情報交換、笑い話の交錯が休憩時間の風景です。
もちろん、中には「3番のグリーン、今日のカップの位置は難しいね」など、プロとしてのやりとりもあることは、申し添えておきます。
Q6. ゴルファーの癖って見抜ける?
ある程度見抜けます。
というより、何百人・何千人とご案内していれば、自然と“読み取れるようになっていく”感覚です。
ある常連のメンバー様は、普段は「よろしくお願いします」と朗らかに話しかけてくれる方なのですが、クラブ競技の日などは帽子を目深にかぶって無口になりがち。
緊張が表に出るタイプなのでしょうね。
スタートホールで目が合っても軽く会釈するだけ。
そんな日は無理に話しかけず、必要最低限のサポートに徹したほうが良いと判断します。
逆に、スタート前から「今日は練習場で全部引っかかったよ」と笑っている方のほうが、意外とリラックスして好スコアを出されたりします。
「開き直る強さ」を持っている方は、メンタル面が安定している印象です。
癖といえば、プレーが進むにつれて“こだわり”が露わになる方もいます。
風の強さを妙に気にされる、バンカーを極端に嫌う、特定のクラブだけを多用する。
こうした癖はを理解すると、コミュニケーションも取りやすくなるものです。
キャディは、距離やクラブ選びだけでなく、プレーヤーの内面にも目を配る職業です。
お客様の癖を知ることは、サポートの質を高める大きな鍵でもあるのです。
Q7. キャディ同士の人間関係は?
職場に「いい人ばかり」なんて、都市伝説です。
キャディの世界も例外ではありません。
もちろん、基本は助け合いですが。
「あの組、スローペースだったけど、午後のスタートずらしてもらったよ」とか、「グリーン速いから、ラインのアドバイスは控えめでいった方がいいかも」といった連携は当然あります。
しかし、こんな古株もいますね。
新人に対して、「わからないなら何でも聞いて」と言いながら、聞くと露骨に嫌な顔をすることもしばしば。
指導じゃなくてマウンティングになってるじゃん…と、内心ツッコミたくなる場面もあります。
勿論、そんな人ばかりではありません。
安心して下さい。
気の合う同僚もちゃんといますから。
いやな同僚がいても、同じ場所で共同作業をする時間なんて、ごくわずかですし。
悪天候はつらいけど、健康的な仕事だし結構なお金も稼げるので、私は良い仕事に就いたと誇りを持っています。
明日も頑張ります。
まとめ|キャディは“裏方”じゃなく“共演者”
キャディの仕事はご存じの通り、ただ荷物を運べばいいというものではありません。
プレーヤーと一緒にラウンドを作り上げる“共演者”です。
そんな仕事の裏側を知ることで、次回のラウンドが少しだけ変わって見えるかもしれません。