オーガスタナショナルはマスターズが終わって間もない5月から、芝生育成のためクローズする。
毎年行われるこの作業が日本では考えられないスケールで、まさに驚愕。
正式名称はオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブ:Augusta National Golf Club。
アメリカ・ジョージア州オーガスタにあるゴルフ場だ。
通称マスターズで親しまれているトーナメントは1934年に『オーガスタナショナルインビーテーショナル』として開催された。
1939年の第6回目から現在の正式名称である『The Masters Tournament:マスターズ トーナメント』となっている。
オーガスタナショナルのレアウトや咲き乱れる花、マスターズの歴史、優勝者などについては多くの記事に書かれているので、ここではカット。
この記事には、日本ではあり得ない独特なコース管理及びトーナメント運営、桁違いなスケールなど、あなたがまだ知らない驚愕の実態を述べる。
オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブが5月から10月までクローズする理由とは?
あなたは御存じでしたか?
オーガスタナショナルはマスターズが終わり、その熱気をまだ少し残したままの5月に入ると10月までクローズしてしまうことを。
クローズの理由は芝生を育成するためだ。
育成と言っても、ただ芝生を寝かせ、飼料を与えて雑草を取る、などと言うレベルのものではありません。
オーガスタナショナルはグリーンにはベント芝の1種ペンA-1を、フェアウェイとラフにはバミューダ芝を使用している。
ペン-A1は高温に弱くバミューダ芝は高温多湿に強いが、気温が低くなり始める秋には枯れて茶色になってしまう。
オーガスタナショナルは夏の間、高温に弱いグリーンを休め、同時にフェアウェイの大掛かりな改修、改造に取り掛かるのだ。
具体的には、オーバーシードと言って、バミューダの上からライグラスの種を蒔く作業をする。
ライグラスはバミューダ―が枯れる気温の低い、秋、冬、春に青く輝く芝生だ。
そして、オーガスタナショナルの凄いところは、ただ単にバミューダの上にライグラスの種をまくだけではないことだ。
スキャルピングと言ってバミューダ―の、ほぼ根だけを残して葉と茎を刈り込む作業をする。
その上から、とても濃い密度でライグラスの種をまいていく。
マスターズの4月にオーガスタナショナルの芝生があんなに鮮やかな緑に輝くのは、バミューダ―とライグラスのいわばコラボレーションのなせる業なのだ。
一度、作業途中の写真を見てビックリしたことがある。
まるで、全ホールの芝を剝がしたようにフェアウェイは土の色。
このような離れ業をやってのけられるのは、オーガス・タナショナルの財政がとても豊かだからに他ならない。
毎年、半年近くもクローズして大改修を敢行し、フェアウェイを生まれ替わらせる。
日本のゴルフ場関係者にとっては、驚愕とも言える出来事なのだ。
その財政を支える大きな柱は、メンバーの年会費とマスターズから上がる収益だ。
年会費は一人300万円とも400万円とも言われている。
日本では小金井カントリー倶楽部の33万円やイーグルポイントゴルフクラブの100万円が高額年会費で有名だ。
オーガスタナショナルのメンバーは世界中に合わせて300人だけ。
年会費収入は9億円から、最大12億円の計算になる。
勿論、これにゲストプレイフィの売り上げも加算されるが、日本のアコーデアのように詰められるだけ詰める運営ではないし、営業期間も約7ヵ月。
これは大した金額にはならない。
マスターズ・トーナメントからの余剰金については、マスターズについての次章で詳細する。
メンバー数の300人はかなり確度の高い数字ですが、年会費の額についてははっきりとした裏付けは取れていませんので、そこはご容赦を。
それにしても、仮に年会費が300万円だとしたら、年収2千万や3千万円の人でもメンバーにはなれないでしょうね。
税金を払って、年会費を払ったら毎月の生活費がギリギリ、なんてことになりかねません。
数億円以上の年収がなければ、余裕をもってメンバーとしての行動はできないでしょう。
オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブの仰天な特殊性とは?
初めてオーガス・タナショナル・ゴルフクラブに行った人が、まず驚くのはコースの入り口。
門番が複数人いて、人の出入りを厳重にチェックしている。
ただし、メンバーや何度もプレーに行っているゲストは顔パスでは入れるようだ。
日本にも立派な門構えのコースは多いが、複数の屈強な番人が見張っているゴルフクラブは見たことがない。
門を無事に通過していよいよプレー。
オーガスタナショナルではカートの使用は一切できない。
全員歩きで、キャデイもカートは使わずバッグを担ぐ。
したがって、プレヤー1人に1人のキャデイが付く、いわゆるワンバッグ。
キャディさんの多くはプロ。
しかも、ゲストが二人ならメンバーも二人同伴しなければラウンドできないのだ。
これも、日本のゴルフ場では見かけないこと。
平日でもメンバーの同伴を義務付けている名古屋ゴルフクラブ和合コースなどでも、基本的にメンバー1人でゲストは3人までOKだ。
そして、さらに驚くのがクラブハウス内。
プレーが終わるとメンバー同伴でクラブハウス内を見学して回れるのだと言う。
その中には、日本では絶対あり得ないコーナーがある。
マスターズの歴代優勝者専用ロッカールームがあるのですから、驚きだ。
しかも、ロッカーにはカギがかかっていない。
開けるとグリーンジャケットが吊るされているのだと言う。
なぜ、ここにグリーンジャケットがそろっているのか、二通りの説がある。
・持ち帰り用と二着渡される
・ジャケットは優勝した直後こそ持ち帰って良いが、1月ほどしたらコースに置いておくことが義務付けられている
私は後者のように聞いた記憶があるが、確証はない。
確認でき次第、書き足しておきましょう。
そして、プロショップ。
ここにはマスターズグッズをはじめ、オーガスタナショナルのロゴ入り製品が、実にたくさんそろっている。
コースは難しすぎて、どこをどう回ったかよく覚えていなくとも、このプロショップが楽しくてオーガスタが忘れられないと言うゴルファも多いようだ。
最後に料金ですね。
ゲスト料金は日本円で3万5千円前後と聞いている。
ただし、キャデイフィがここに含まれるのか、別にチップ制なのかは確認取れていません。
向こうは日本と違って、キャデイさんの多くはプロですから、チップ制だと思うのだが。
確認が取れていないことも多くて大変申し訳ありませんが、オーガスタナショナルの驚くべき特殊性は伝わったのではないだろうか。
マスターズの入場者と収入は他のトーナメントを圧倒!
マスターズ・トーナメントで特殊なのは、優勝賞金が試合前に決まっていないことだろう。
これはマスターズではパトロンと呼ぶ、観客の売り上げ金が賞金額に反映されるからだ。
大会三日目に賞金総額及び優勝賞金が発表される。
2022年の大会は、マスターズ史上初めて優勝賞金が3億円を超えた。
ちなみに日本の松山英樹選手が悲願のメジャー初優勝を飾った2021年は、賞金総額12億6,100万円、優勝賞金は約2億2,700万円だった。
尚、マスターズの賞金対象はグッズ の売り上げ、チケット 、国内外のテレビ放映権、飲食関連 とタイトルスポンサー収入がある。
マスターズ委員会は毎年、1日の入場者が50,000人を目安にチケットを発行する。
マスターズの人気は日本のトーナメントでは想像もできないほどスゴイのだ。
枚数に限りがあるから抽選になるが、オリンピックやサッカーW杯のように抽選漏れの人が圧倒的に多くなるのだ。
この結果、何が起きるかと言えばどこの国も同じでチケットの転売だ。
2021年はコロナの影響で、1日当たり12,000人程度に抑えられていたが、2022年はフル人数に戻している。
2021年大会でのチケット料金は練習ラウンドが75ドルで、本選は115ドルだった。
人気の年は10倍の値で転売されることもあると言う過熱ぶりだから、本当に驚く。
アメリカのゴルフ専門誌『ゴルフダイジェスト』の試算によると、2021年のマスターズで得られた総収入は150億円前後だったと言う。
マスターズの集客力、収益力は他のトーナメントを圧倒している。
賞金総額が約12億6千万円だから、総収入の10%にも満たないことになる。
マスターズの運営主体が詳細を発表しないから、実際のところは分からないが莫大な余剰金があることは想像できますね。
このことこそが、オーガスタナショナルの章で述べた、豊かなクラブ財政の大きな柱であることを証明しているのだ。
毎年、毎年、思い切ったコース改修ができるのも、マスターズの収益に由るところが大きいと分かりますね。
マスターズ・トーナメントは優勝者に生涯出場権が与えられますが、これも他には見られない特殊性だ。
さらには、マスターズが開催される週の火曜日夜には、大会に出場する歴代優勝者のみが集って晩餐会が催される。
晩餐会のメニューは前年の覇者が決めることになっている。
全員が勝者の証しであるグリーンジャケットを着て食事を楽しみ、記念撮影をするのだ。
最近はアメリカ以外の優勝者が増えて、自国料理でメニューを構成する選手が多く、国際色豊かになっていると言う。
2022年大会前の晩餐会で、前年優勝の松山英樹選手が選んだのは和食だった。
前菜が寿司、刺し身の盛り合わせ、そして焼き鳥。
メインは銀ダラの西京焼きか、宮崎牛のリブアイステーキ山椒おろしぽん酢添えのどちらかを選択。
デザートにはイチゴショートケーキが出ている。
これまで日本ではほとんど知られていなかったマスターズ内側の様子が、松山選手の優勝によってかなり伝わるようになった。
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