ラグビーワールドカップ準々決勝で日本は南アフリカに3対26で敗れたが、世界中のラグビーファンに強烈な印象を残した。
同試合の平均テレビ視聴率は41,6%で、今年すべての番組を通じて1位だと言うから凄い。
瞬間最高視聴率が49%超だったから、日本国内半数のTV画面はラグビーを映していたことになる。
日本中の老若男女がTV画面にくぎ付けになった、と言っても過言ではないだろう。
かく言う筆者も、ハーフタイムでさえチャンネルを変えずに画面に見入っていたのですが、これまでには考えられない自分史上で実に画期的(?)な出来事でした。
ベスト8進出をかけたスコットランド戦同様、台風19号の犠牲者に黙とうをささげた後、君が代が斉唱された。
前回スコットランド戦はスタンドの中年男性の涙がTV画面に映し出されたが、南アフリカ戦は流 大(ながれ ゆたか)選手の涙がとても印象的だった。
南アフリカも自国の国歌斉唱では二人の黒人選手が涙を流していた。
彼らの涙は国別対抗であるから、選手は自身の名誉とともに自国の名誉をかけて戦っている証であろうか。
もう、このレベルになると彼らが背負うプレッシャーや責任、名誉、自負などの重さ大きさは想像もつかない。
しかし、彼らの表情や涙を見て国歌の持つ意味や力の偉大さを改めて知らされた思いがする。
たかが歌と言うなかれ。
短い国歌を斉唱しながら自己の戦闘意識を高め、チームが一つとなって行く過程が実によくわかる大会であった。
日本の君が代は言うまでもなく、どの国の選手も自国の国歌には強い誇りを持っているのが伝わってきた。
試合開始前からこれほど感動を受けたスポーツ大会は記憶にない。
さて、試合であるが3対26という数字を見れば完敗であろう。
筆者は今大会が始まってからの『俄かラグビーファン』であるから、詳しく分析する能力もないし、無理に分析を試みようという気もサラサラない。
試合を見ていて度々ラインアウトで南アフリカにボールを奪われたことと、予選リーグで幾度となく見た華麗なトライがとても遠く感じたのが印象的であった。
しかし、準々決勝で敗れはしたがALL JAPAN&ONE TEAMの健闘は日本国民ならず、海外のラグビーファンをも魅了したようだ。
大会を統括するワールドラグビーのYouTube公式ページで、日本対南アフリカ戦のハイライト映像がアップロードされると、忽ちネット上に世界各地からコメントが殺到した。
「日本は世界の大舞台で強豪と渡り合えるチームになった」
「日本の躍進は一朝一夕で実現したことではないだろう」
「おめでとう南アフリカ。
でも、日本代表が何度も証明してくれたチームスピリットやメンバーの献身さに、より大きな賛辞を贈りたい」
「日本のプレーを見ていて思ったよ。
イタリアの代わりに彼らがシックス・ネィションズでプレーするがいいかもネ」
「ほんとうに素晴らしい大会をありがとう。
日本のファンも代表チームを誇りに思っているだろうね」
「日本の代表チームは国民に誇りを与えたと思う。
自分たちの強みを発揮し、ホームアドバンテージも生かしたし、その彼らを称賛しよう!」
またこの大会では試合終了後のユニフォーム交換も実に選手同士が親しげに行っていたし、敵味方入り乱れての記念撮影も微笑ましかった。
選手のみならずスタンドではファン同士がユニフォームを交換する姿も、試合ごとにTV画面に映し出されていました。
日本人を見習って、オールブラックスが整列して全員で日本式のお辞儀をしていたのですが、これにはグッとくるものがありました。
試合中止になったカナダ選手の台風被災地においてのボランティア活動も忘れられない。
試合は言うまでもなく、試合以外でも数々の感動を残したラグビーワールドカップ。
まだ準決勝、決勝の3試合を残しているが、この大会にはすでに大成功の評価を躊躇なく下せる。
ラグビー日本代表では史上最強となったチームの愛称は『ブレイブ・ブロッサムズ』だ。
『ブレイブ・ブロッサムズ』は、勇敢な木に咲く花の意味だそうで、ユニフォームにあしらった桜のエンブレムにちなむとのこと。
2003年の第5回ラグビーワールドカップ・オーストラリア大会における、日本代表の善戦を地元タウンズのファンが称えて呼び始めたと伝えられている。
勇敢がBraveで木に咲く花がBlossoms。
英語では桜の木に咲く花がチェリーブロッサムだ。
彼らブレイブ・ブロッサムズの旅は終わった、いや束の間の休息を経て間もなく新たに旅立つことだろう。
さらなる高嶺を目指して。
大成功裏に大詰めを迎えたラグビーワールドカップ。
果たして優勝はイングランド、ニュージーランド、ウェールズ、南アフリカのどの代表が手中に収めるのであろうか。
日本代表ブレイブ・ブロッサムズはもういないが残り3試合、またまたテレビ画面にくぎ付けになってしまいそうだ。